「半農半X」というライフスタイル

https://www.ishes.org/cases/2011/cas_id000025.html

「半農半X」というライフスタイルが、近年注目されています。これは、京都府綾部市在住の塩見直紀氏が1990年代半ば頃から提唱してきたライフスタイルで、自分や家族が食べる分の食料は小さな自給農でまかない、残りの時間は「X」、つまり自分のやりたいこと(ミッション)に費やすという生き方です。農のある暮らしをしながら、自分が大切だと思うこと、大好きな仕事をすることで、精神的に満たされるというこの半農半Xという暮らし方は、収入が減少しても心豊かな暮らしをしたいという人たちから共感を集めています。特に20代〜40代が関心を示しているといわれています。

「X」にあたる部分は人それぞれ。農的生活をしながらNGOで活動する「半農半NGO」や、「半農半ライター」「半農半歌手」「半農半保育士」などさまざまです。塩見氏の著書『半農半Xという生き方』(ソニー・マガジンズ新書)にも、半自給的な「小さい農」を営みながら、自分が大好きで、心からやりたいと思うことをやっている人たちがたくさん紹介されています。

 たとえば、高齢化が進む町で米作りをしながらヘルパーの仕事をしている方。ヘルパーが不足している過疎の町村では特に必要とされ、「自分の好きなことが社会の役にも立つ」と生きがいと喜びを感じながら暮らしているそうです。また、得意な英語を活かし、映画の字幕翻訳の仕事をしながら、近所の子どもたちに英語を教えている40代の方もいます。「暮らしのベースにあるのはあくまで『農』で、そのうえで自分に与えられた使命を尽くせばよい」という半農半Xの考え方に出会い、「自分の存在に自信を持てるようになった」といいます。そのほか、築100年を超える広い古民家で、田舎暮らしの体験希望者を受けている70代の女性、得意の蕎麦ぼうろづくりの腕を活かして教室の講師になった80代の女性など、生き生きと暮らす高齢者たちもいます。それぞれが、半農半Xを通して魅力的な暮らしを実践しています。

 生活費を稼ぐだけの生き方ではなく、大好きなこと、大切だと思うことをしながらイキイキと暮らしたい、自分の得意なことを社会に役立てたい、天職を見つけたい、と願う人は多いでしょう。「自分の時間の半分を使って自分や家族の食べ物を作るための農業(自給農)をやり、残りの半分の時間で、自分がやりたいこと、やっていきたいと思っていることをやろう」という「半農半X」という生き方は、そうした人たちにとってひとつの大きなヒントになるでしょう。

https://www.ishes.org/interview/itv04_01.html

最初、「半農半X」は
自分を救うためのコンセプトだった。

ベランダでもいいし、屋上でもいいし、大好きな場所で、やれる所からやる。1日30分、40分でも土とか植物に触れるという、かなり緩く、敷居を低くすることで、誰でもできる。

まず考えたのは、食卓の自給率を0.001でも上げていくことが重要です。自分の時代に0.1上げて、次の世代が0.2にして、という発想ですね。自分の世代ですべて、本当は解決しないといけないくらいの危機的な状況であり、無力感もあると思いますが、次の世代にバトンタッチをするような「経世代型」のスタイルでいいと思います。

あとは、第一歩を踏み出せない人が大半だと思うんですけれども、「初めの一歩力」みたいなのが重要なので、何でもいいと思います。市民農園を借りてみるとか、長く会っていないおじいさんをお盆に訪ねていってちょっと手伝うとか、友だちの所に行くとか。リトルアクション(小さなアクション)を重ねていくことが重要かなと思います。

https://agri.mynavi.jp/2023_01_12_215248/
半農半Xはなぜ失敗する? 経験者が語る失敗事例とそこから得た教訓とは

「半農半X」というマインドが失敗のもと?
これには「半」という言葉に「片手間」「中途半端」という語感が含まれていることに大きな原因があると考えます。

どちらの関係者からも「副業」「片手間」のイメージで見られる

オーバーワークに注意
「半農半X」のどちらの仕事でも認めてもらうためには、相応の頑張りが必要です。そこで陥りがちなのが「オーバーワーク」です。取り組むべき業務がどんどんと増え、次第に作業が回らなくなっていく。気が付けば取り返しがつかない状況に陥り、体だけでなく心までもむしばまれ、どちらの仕事も辞めざるを得ない……。これでは本末転倒です。

僕自身、就農当初はオーバーワークに悩まされました。特にはじめの頃は、農作業の段取りが全く理解できておらず、一つひとつの作業に現在の2~3倍の時間を使っていました。食事と睡眠の時間を除けば、ほとんど働いているということも珍しくありませんでした。

オーバーワークを防ぐためにも、就農当初は小さな面積から始めることを強くお勧めします。なぜなら上記のように、最初のうちは「作業時間がどれだけかかるのか」「作業に入るまでの段取りにどういった手間がかかるのか」などが全く見通せないからです。まずは小さく始め、作業時間を把握する。天候による影響なども考慮したうえで、基準となる作業時間を割り出しておけば、次年度以降は効率的に農業ともう一つの仕事を組み合わせていけるようになります。

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